岡山県笠岡市真鍋島地域支援実習についての報告

岡山県笠岡市真鍋島地域支援実習についての報告(臼井隆子)
ホスピタリティツーリズム専門学校大阪旅行科1年生(夜間部)
~真鍋島・白石島を地元ガイドと巡る文化・自然の体験ツアー~


「企画実習」のねらい

三虎さんでのウェルカムスピーチ

真鍋島の観光事情と背景
笠岡諸島の地域資源を生かし、交流人口の拡大へと導くローカルイニシアティブなツーリズムが地域の雇用と元気の創出に効果的ではないかという仮説の下、2008年から2010年にかけて真鍋島における体験メニューの開発を行ってきた。このことにより、島民自身が島の資源の有効活用について意識するようになった。人材育成事業が終わってもなお、若手や移住者らが中心となり、島の未来(というより自分たちが楽しく暮らしていくには)を考える動きが継続している。またフローラン=シャボエさんの真鍋島の本がフランスで出版されたことも後押しして、真鍋島の魅力が再発信され、真鍋島への観光客が増える傾向が見られる。外国人観光客の間でバイブルともいえるロンリープラネットの最新号では、西日本のおすすめ観光地に真鍋島がピックアップされて紹介された。懐かしい日本の風景や文化が残る真鍋島が、コアな観光客に受けることは想像に難くない。

かつては花の島として栄えた観光地真鍋島も、今ではめっきり訪問客も少なくなり、観光客の受け入れ態勢(施設やガイドや体験メニュー)も十分に整っていない。が、素晴らしい地域資源は未だに訪れる人を魅了する。真鍋島でできる観光メニューを、旅行科の学生らの視点からもうひとたび見つめることで、真鍋島の地域資源の有効活用の道が新しく開かれていくこと、また地域の人の自信が育つことを期待している。さらに、旅行社への就職を目指す専門家の卵が、若い時に真鍋島で体験する原風景は、いずれ旅行企画のなかへ溶け込んでいくものと思われ、地域が光る着地型観光が日本のあちこちで定着していく小さなきっかけになってくれればと願うものである。

ねらい

ホスピタリティツーリズム専門学校大阪校1年生(夜間部)が若い感性と視点から真鍋島の地域資源をリサーチし、真鍋島の魅力を伝えられるツアーメニューを考案する企画実習を行う。

元気な学生達がたくさん島を訪れ実習を行った

体験内容
(1)笠岡港から真鍋島までの海洋クルーズ
(2)白石島の散策と島弁賞味
(女将さんから島弁開発秘話)
(3)真鍋島散策(本浦/岩坪)
(4)底びき網漁体験
(5)タコ飯作りと魚さばき
(6)海岸清掃ボランティア
(7)潮風呂
(8)海鮮BBQ(地元との交流)
(9)記念植樹
(10)実習発表(意見交換会)


各プログラムポイントと気がついたこと

真鍋島では、宿泊施設である三虎をはじめ、真鍋支所の職員、金政さん、文屋さん、中室さんが観光客受け入れに尽力しており、人材とチームワークが醸成されてきつつある手応えを感じた。地域全体の盛り上がりになっていけば、着地型観光への動きが一気に整う気配も感じられた。真鍋島住民だけでは、商品(体験メニュー/着地型観光)の流通拡大に限界があり、この部分において都市部との連携をさらに広げていけば、真鍋島での産業の柱になっていく期待感もある。島の人のやる気は過去数年と比べて上がってきていると見るが・・・。


晩秋とは思えない暖かさ

【ポイント1】 笠岡諸島クルーズ
・瀬戸内海の多島美や、陸と切り離されることで島へ渡ると島独特の島時間を感じられることを実感。
・島をぐるりと廻ることで島全体のイメージが掴みやすい。
・香川県が目の前にあることにびっくり。海の道のインパクト。



女将さんの話、ノート片手に熱心に聞き入る

【ポイント2】 白石島の散策と島弁賞味(女将さんから島弁開発秘話)
・白石島を散策した折、島のおじいちゃんらが気さくに声をかけてくれて、いろいろと島のことを話してくれたのが印象的。
・人と人の交流は当たり前のようだが、都会では体験できないこと。温かみを感じた。
・島弁を何も知らずに食べるのと、作り手の話を聞いていただくのでは印象が全然違う。作り手や島弁のストーリーを込めた販売(商品化)の必要性を感じた。



地元の人から島の生活についての聞き取り

【ポイント3】 真鍋島散策(本浦/岩坪)
・1日目に本浦地区を散策。担当は金政さん、文屋さん。
・歩いてみて、子ども達が気さくに声をかけてきたり、遊びの中に招き入れたりしてくれたことがとても印象に残った。
・最初は峠越えもしんどかったが、地元の人の気持ちになれる道。
・昭和のたたずまいを感じる。
・2日目に予定していた岩坪方面の散策は雨のため延期、磯遊びは中止となった。3日目の朝に岩坪方面の散策にでかける。担当は文屋さん、浜西さん。
・3日目の最終日は、岩坪方面散策後、各班毎に分かれて企画を練る時間を取った。必要に応じて島を周り、地元の人にさらに突っ込んだヒアリングを行った。久一さん、森本さん、山下さん、中室さん、金政さん、お好み焼き屋の大将らが協力。若い世代との交流が単にうれしそうだったし、この子達が協力してくれれば何かできるかもしれないという期待感を感じていたように見えた。子ども達の真剣さや誠意が島民の心を動かしたようにも思う。
・地元の人が絶対協力してくれるキラーコンテンツは走り神輿という感触。



ガザミをゲット!

【ポイント4】 底びき網漁体験 
・定員12名の底びき網船を2隻出し、それぞれの船に漁師1名、引率者1名、学生10名を乗せ、伴走船を1隻出して残りの学生を乗せて漁体験を実施した。朝6時出航。漁師は荒山さん、西谷さん。
・危険な魚や行為等、漁師はいちいち説明しないので、事前の説明、または船上で注意を喚起する人材が必要。怪我をしてからでは遅い。
・酔ってしまう子の対応や緊急時の対応を事前に話し合っておく必要がある。
・観光客慣れしていない漁師さんとの対応が素朴で新鮮だった。
・同じ底びき網でも違う漁スタイルだったので、揚がる魚も異なり、勉強になり楽しかった。
・後に用いるタコ飯の材料やBBQの材料もその日に揚がった分でまかなえたが、漁師さんが別の日の漁で揚げたものをこのプログラムのためにちゃんと取り置いてくれていた(相当量)。地元の人のこのような心付けがあるのとないのでは、プログラムのインパクトが随分変わる。ただのビジネスライクなプログラムではこうはいかない。しかし、この部分を参加者にふさわしい形で伝えきれていない。



初めてのタコ飯作りに挑戦

【ポイント5】 タコ飯作りと魚さばき
・自分たちの手で触って、体験できるこの時間は、学生たちがとても積極的に動いていた。
・注意点:2班に分けて行ったが、食事を食べる時間の設定に難があった。底びき網のときに船上で簡単な朝食をとるのがよいと思われる。
・旅行科だけあって、サービス業経験者が多く、準備や片付けのだんどりは抜群だった。
・魚のさばき方や生態について実演を交えながらレクチャーする地元の先生は大ヒーロー。担当は峰口さんと、好意で荒山さんが入ってくれた。



海岸清掃ボランティア

【ポイント6】 海岸清掃ボランティア 
・2班に分かれ、一組は日方浜、もう一組は土生浜を清掃した。日方浜はゴミを集めてもそれを本浦まで送る輸送コストを考えると、燃やしてしまう方がいいという地元の声を参考に、燃えるゴミは消却したが、結局テントやBBQセット等燃えないゴミを久一博信さんの船で本浦へ運ぶことになった。満潮のため日方浜に取り残された学生を拾いにいく目的も兼ねた。
・人出の少ない島のボランティアに来るというツアー企画が今回の切り口の一つとなっていたが、やってみて楽しいしやりがい(島に貢献した感)は感じられるものの、これがツアー客を呼ぶネタにはなりにくいのではないかという意見が聞かれた。海岸だけでなく清掃をしていると、島は案外ゴミが多いことに気がついた。
・観光客や漁船などが捨てるゴミ以外にも韓国からなどの漂着ゴミも多く見受けられた。



さっきまで泳いでいた魚

【ポイント7】 三虎 潮風呂や料理など
・潮風呂:漁師が漁で冷えた体を温めるためにつかったという潮風呂について、説明不足で付加価値をつけられていない。どう体にいいのか簡単な実験で示せると演出効果も抜群なのだが。
・料理:瀬戸内海の海の幸、何より水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を食べたので、美味しさのインパクトは大きかった。もう当分回転寿司に行けんわあという声が聞かれた。
・学生のわりには、ここで出された海の幸の価値(贅沢感)を理解していたように思う。ただし、魚が苦手な人にとってはきつい3日間かもしれない。一方魚が嫌いという人は、新鮮で美味しい魚を食べたことがないからそういうのでは、という意見もあった。



BBQ、雰囲気良し、味良し。

【ポイント8】 海鮮BBQ(地元との交流) 
・地元からの参加者は峰口さん、森本さん、久一博信さん、Uターンの射場さん。用意された食材は、タイの一夜干し、タコ、サザエ、サワラ、カレイ、ニベ、カニ、イカなど豪勢で、真鍋島の海洋資源の豊かさを象徴するようなBBQであった。
・この日のために博信さんが作成したものがある。海上にセットした松明が灯り演出効果も抜群で、新調したBBQセット2台も大活躍だった。学生らと地域野人が協力しながら準備をしながら、歓談のときとなった。島民らも楽しそうに交流していたが、先生の方からは積極的に地域の人に質問をしない生徒らにハッパをかけるシーンがあった。学生達は学生達同士の話の輪で盛り上がっていたようだ。
・絶好のロケーションと美味しい食事であっという間に贅沢な島時間が過ぎていきお開きとなった。



全員ポーズ、記念植樹の後で

【ポイント9】 記念植樹
・学生らに草を刈るところからさせるつもりで、三虎さんが植樹用の苗と水仙の球根を用意していた。午前中の別の活動と(雨が降ったため前日行う予定だった城山方面の散策が入り)記念植樹の時間のバランス具合が難しく、時間に追われながら慌ただしい記念植樹となった。
・三虎にとっても学生にとっても、島と訪問者をつなぐ象徴的な行事であり記念となる上、植えられた木はいつまでも真鍋島に残る。いつか学生らが顧客や家族を連れてきた時に、時代と人の絆を語るシンボルになるだろう。植えられた木は、真鍋島ならではのホルトの木、イヌグス、ヤマモモ、アベマキで、それぞれにストーリーがあるのもよかった。将来これらの木々を植えたことで、下草刈りが不要となるほど成長したあかつきには、博信さんの仮説も証明されることになる。残念なのは、博信さんの小さなプロジェクト(真鍋島にどんぐりを)について十分な説明もないまま、機械的に植樹をして終わった節があることだ。
・植樹の片付けを手伝って残ったわたしは、三虎夫妻が夢見る真鍋島の丘に展望台を作るというプロジェクトの話を聞き、ここに作りたいという現場を案内してもらった。そこからは本浦と三虎沖の海が見渡せる。いろいろ手がけたいことはあるが、人手が足りなくて回っていないという真鍋島へ、作業するために来てくれるボランティアのためには、宿泊費を半額にする等の協力ができると思うと三虎さん。



締めくくりの会

【ポイント10】 実習発表(意見交換会)
・3日間の短い行程のなかで学生は何をつかんだのだろうか? 帰ってから企画を立てるということなので、楽しみにしている。観光地化されていない真鍋島の素朴さに触れて心に思うところもいろいろと多かったと思うが、その演出の難しさには彼らも頭を悩ましていたように思う。
・島の素朴さに言及する人が多かったが、それは知って知らずか真鍋島の住民が築き上げてきた文化であり生活スタイルであり、彼らなしにはこの真鍋島ならではの観光は成り立たないことを改めて感じた。
・地元と外からの(真剣に真鍋島に寄り添って一緒に考えようとする)訪問者の交流によって、双方によい刺激が生まれ、相乗効果が生まれるように感じた。刺激が新しい考え方やアイデアを生み出していく。これが継続することで、地元の人に経験知や自信が生まれ、あるとき「ああ、こうすれば!」というようなひらめきが生まれるのかなと感じた。あくまでも島外の人はサポーターとしての役割や刺激をもたらす者としての機能や宣伝部隊としての機能に徹するべきかと、わたしは思っている。歩みはスローかもしれなくても、あくまでも島の人が主体となれる、そんな着地型観光が定着すればいいのにと心から願っている。



【今後の展望・課題】 

学生らが作り上げてくるツアー企画については楽しみに待つこととして、今回のツアー受け入れで特筆しておくことをメモしておく。

この時期の岡山を代表するサワラが大ヒット
(ア)サワラの刺身にBBQにヅケ丼にと多様な料理が出されたが、手応えアリ。美味しいと大好評。
(イ)こんなに美味しいタコで(大阪のグループならではの)たこ焼きを作ったら絶対美味しいとの声。
(ウ)峰口商店にリクエストすれば送ってくれる、顔の見える流通。(真鍋には魚屋がない)

観光受け入れ体制
(ア)限られた人員で観光ガイド等を回しているので、雨等で日程が変わると対応困難も。
(イ)気が利き、いろんな人と綿密なコミュニケーションを図る文屋さんのおかげで連絡がスムースで、この働きがあったおかげでプログラムがうまく行った部分が多い。
(ウ)三虎さんが以前より積極的&協力的にこのようなプログラムと連携しようとしてくれている。また自分たちで真鍋島の観光や地域づくりを立て上げていきたいという気概を感じる。
(エ)以前より多くの人が関わってくれているので、全体的に取り組もうというムードも醸成することができるのではないかなという印象。(そのためには中核となる人物が必要)
(オ)メッセージを効果的に伝えられるガイドやコーディネーターが増えることが望ましい。

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